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2005-01-18

坂木司『仔羊の巣』

坂木 司著: 仔羊の巣(創元クライム・クラブ)シリーズの新作(3作目)が出たので再読.

『ひきこもり兼料理人兼名探偵』のシリーズ2作目です.
おいしい料理と暖かな人間関係が奏でるヒューマンミステリー(?)です.

個人的には書き手(坂木さん)がお気に入り.
あまり見た目のスマートさは無いけれども,
悩んだり,困ったり,うろたえたりしながら,
毎日を真面目に生きているところがいいです.
一見頼りないけれども,芯のところではちゃんと
自分を持っている,そんな生き方が格好いいです.

たとえば,あなたは『同僚』と『友達』の違いを考えたことがありますか?

とりとめもなく、二人のことを考えた。今頃,吉成は何をしているのだろう。 ---(中略)--- 僕にしてみても、こうして彼らのことを考えているのは、ちょっと不思議な気分だ。なぜなら、僕らは仲のよい同僚だったけれど、仕事を離れてプライベートで会うことはなかったから。仕事帰りに飲みに行くことはあっても、わざわざ連絡をとって会社以外の場所で顔を見たことがない。「同僚」って、そのくらいの距離感なんだろうと僕は思っていた。
そこで、ふと気がついた。
同僚って、いつ友達になるのかな?
「つまり、目の前に相手がいなくても、その人のことを思いやったときから友達なんだよ」
---(中略)---
「ああ、なーんとなくわかるな、それは。ただの仕事相手だったら、会う前にも会った後にも、仕事のことに関連づけてしか思い出さないけど、そうじゃない奴がいるもんな」

たとえば,いじめられている子供,つらい病気で苦しんでいる人,
そんな人たちのことを考え,やりきれない思いになることがあります.
そんなとき,こんな言葉を伝えてくれる人がいますか?

「優しくしてあげればいいんだよ。困っている人には、声をかけてあげればいい。なに、簡単なことじゃないか。一番近くにいる人からはじめて、まだ手が届くようだったら、もう少し先の人に優しく。そういう風にしていけば、いつか遠くにも届くだろう?」
「司が見つけてあげればいいんだよ。見もしようとしない人、そこにあることも気づかない人、見えているのに見ないふりをしてる人、いろんな人がいる。でも、困っている人が司にはちゃーんと見えてる。それを困っている相手に、伝えればいいんだよ。僕はあなたを見てるよ、知ってるよ、って」
「言うだけで、いいのかな。何かしなくても」
「そうだね、した方がいいよ。でも司は一人だし、手も二本しかないだろう? だから、気がついたときそう言ってあげるのがいい。

そんな書き手の周りに人間味のある人が集まり,
世代を越えた穏やかな人間関係が築かれています.
なんか夢のような,でもなぜか懐かしい,
不思議な暖かさが感じられる作品です.
読み終わって一人暮らしの自分を振り返ったとき,
たとえば,夕暮れの中,ふと漂ってくる夕食を匂いを
かいだときに感じるような,そんな一抹の寂しさが残ります…

⇒ 坂木 司著: 仔羊の巣(創元クライム・クラブ)

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